I’ll Become a Villainess That Will Go Down in History

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「私が必要?」

お父様の言葉をオウム返ししてしまう。

私から見れば、ジルはもう一人前だ。……もしかしたら、嫌でも大人にならないといけない環境だったのかもしれない。

私が彼から子どもらしい人生を奪ってしまったのかしら。

「ジルはアリシアがいたから成長出来たんだ。その点、彼はとてもアリシアに感謝している」

お父様は一呼吸置いた後、「だが」と付け足した。

「いくら成長できたといっても、まだそばにいてやりなさい。それに、強がっているかもしれないが今のジルは不安定だ。……アリシアも不安定か」

「ウィルおじさんの件で?」

私は自分の心の不安定さをまだ一切悟らせていない。

それぐらい私はなんとか自分を取り戻している。それなのに、お父様はどうして私のことが分かるのだろう。

「ああ」

お父様の短い返事に私は「私なら大丈夫です」と答える。

確かに心にぽっかりと穴は空いているし、この穴はそう簡単に埋まるものではない。

けど、いつまでも辛い思いを引きずっていても、時間の無駄だもの。ウィルおじさんは私にそんなことを望んでいないわ。

「……ジルは今どこへ?」

「貧困村だ。……いや、元貧困村、というのが正しいのかな」

「少しだけ席を外してもいいですか?」

ジルの元へ向かわなければならないという思いが一気に押し寄せてきた。

もしかしたら、今彼は一人になりたいのかもしれない。だからこそ、お兄様たち勢揃いでこの部屋にいるのかも……。

お父様も今までジルがどこにいるかなんて言わなかった。

……だけど、私は今のジルに会いに行かないと!

一人になりたい、なんて言われても知らないわ。私は自分勝手な悪女なの!

「今行っても」

「関係ありませんわ」

私はお父様の言葉に被せるように言葉を発した。

「では、失礼します」

それだけ言うと、早足でその場を離れた。

駆け足で屋敷を出て、貧困村へと向かう。ヒールは走りにくいけれど、そんなことを言っていられない。

折角、新品のドレスを着て、化粧をして、綺麗に身にまとっても、結局私は私だ。

どれだけ着飾っても、あまり意味ないのかもしれない。……それでもいい。悪女なんて汚れてなんぼだわ。

久しぶりに貧困村へと続く道を走る。幼い頃からずっとこの場所を走り続けてきた。

毎日のように、ウィルおじさんに会う為に……。

今思えば、ウィルおじさんがジルと出会わせてくれたのよね。途中からはジルにも会いに行くようになった。

そして、貧困村からジルを解放した。……ウィルおじさんがいなければ、私はジルと出会うことはなかったかもしれない。

ウィルおじさん、貴方はジルという素晴らしい宝物を私に遺してくれたのね。

……ジルのことは私が命に替えても守ってみせるわ。