I’ll Become a Villainess That Will Go Down in History

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メルに呼ばれてリズが教室に入って来る。リズの顔がまだ強張っている。

きっと、さっきの光景を少しだけ見たんだろうな。

けど、聖女の魔力を持っているのならデュークがこの部屋を綺麗にする前に解決して欲しかった。勿論、こんな残酷な光景を見るのは苦痛だろうけど。

それでも彼女にそこまで求めてしまうのは欲張りすぎているのだろうか。

……まぁ、しょうがないよね、キャザー・リズは普通の女の子だから。アリシアとは違うんだ。

「治せるか?」

デュークがリズに聞くと、リズは眉間に少し皺を寄せてエマを見つめる。まるでエマの痛みを自分も味わっているかのようだ。

「治せると思うわ」

リズはそう言って、エマの前に立ち、彼女に魔法をかける。リズから放たれる魔力は想像以上のものだった。眩しい光が彼女達を包む。

……これが聖女の力なんだ。初めて目の当たりにするキャザー・リズの魔力に思わず後退ってしまう。

聖女と言われるだけのことは確かにある。

エマの額の傷は消え、足の腫れも治まり元通りになる。顔色がさっきより随分と良くなった。

ああ、アリシアが言っていたのはこのことなのかも。キャザー・リズには努力じゃ敵わないって。けど、近付くことは出来る。

こんな人を目の前にして、頑張り続けられるアリシアが凄い。僕なら諦めてしまいそうだ。

キャザー・リズがエマを治している間、僕はそんなことを考えていた。

「相変わらず流石だな」

全て終わった後、ヘンリは少し顔を引きつらせながらそう言った。

キャザー・リズは無事にエマを治せたことにホッとしている。

これほどの魔力を使った治癒魔法。相当な体力を消費しているはずなのに、ふらつく様子もない。

「やっぱり、メルは嫌い」

隣でボソッとメルの呟きが聞こえた。嫌いの対象はキャザー・リズのことだろう。

メルはキャザー・リズのことを嫌いのままでいいと思う。それを含めてメルだ。彼女が急にキャザー・リズを好きになったら違和感を抱きそうだし。

「助かった」

デュークの言葉にリズは嬉しそうに口角を上げる。

「ううん。私も一人じゃ何も出来なかったから有難う。……それにしても誰かしら。こんな惨いことをするなんて」

リズはエマの方を見つめる。僕は口を開く。

「リズ信者だよ」

「え、私の信者?」

「リズを盲目的に信じている者達はアリシア派がいることを許せないんだ。だから、見せしめにこんなことをしたんだと思う」

「……そんな」

ショックを受けるリズに対してデュークは声をかける。

「どっちの思考を信じるかは勝手だが、流石にここまで害を及ぼすとなると何か手を考えないといけないな」

「ええ、勿論よ。私が元凶だもの。自分がしたことの後始末はちゃんとしないと」

力強い声。彼女の目は覚悟を決めたものだった。

キャザー・リズが最初から本性を表に出していれば、デュークに少しは好かれたかもしれない。馬鹿な考えだけど、一理ある。

まぁ、それでもデュークがアリシア一択なのは間違いないだろうけど。だって、デュークは九年間もアリシアのことを想い続けているんだから。

「けど、熱狂的なリズ信者はリズのことを想ってこんなことをしているんだよな」

「じゃあ、私がこんなの望んでいないって言えばいいのかしら?」

「いや、それもあんまり意味がないような気がする」

ヘンリは難しい顔をして黙り込んでしまう。

確かに下手に動くと火に油を注ぐことになって、事態が悪化する。

暫く沈黙が続いた後、メルの明るく軽快な声が部屋に響いた。

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こんにちは!大木戸いずみです。

いつの間にか九月になっていて驚いています(笑)

嬉しいことに、『歴史に残る悪女になるぞ』三巻が九月十五日発売されます!!(;_:)

本当にいつも読んで下さる皆様ありがとうございます。幸せです(;_:)

これからもよろしくお願いします。